【ブランディングとは】
実際、ブランドはどのようにして構築されているのでしょう。企業や団体は、自社の製品・サービスに対して何をどのようにしたら「ブランド化」することができるのでしょうか?
ブランドとは、突き詰めれば「消費者・顧客の心の中に作り上げられる心象(イメージ)」です。企業や団体は、マーケティング活動などを通じて、ブランドの構築を推進し、その結果、消費者・顧客の心の中に「心象」が作り上げられるのです。
【ブランディングの流れ】
①「ブランド・アイデンティティ」の策定
まず、ある製品・サービスをブランド化するためには、企業や団体がその製品・サービスが「何者か(アイデンティティ)」を示すため、ブランド活動の「旗印」を立てなくてはなりません。これは、企業や団体が製品・サービスによって提案したい「ブランド独自の価値」をひとことで表したものです。
これを「ブランド・アイデンティティ」と呼びます。「アイデンティティ(Identity)」とは耳慣れない言葉かもしれませんが、日本語に訳すと「環境や時間によって変化しない主体性、自己同一性、身分証明」となります。「自分(自社)らしさ」と言い換えてもよいでしょう。
「ブランド・アイデンティティ」は、企業や団体が設定した「我々はこう思われたい」という「あり方」の宣言になります。
ブランディングは、まず自社の「ブランド・アイデンティティ」を策定するところからスタートします。
②刺激の設計
次に、企業や団体は「ブランド・アイデンティティ」に基づいて、「ブランド要素」と「ブランド体験」を設計する必要があります。
「ブランド要素」は、ロゴ、キャラクター、ブランド名などブランドを形成する最小単位の要素で、消費者・顧客がブランドを識別するのに役立つものです。
一方、「ブランド体験」は、消費者・顧客がブランドと接触する際の体験すべてを指します。例えば、ホームページ、パンフレットなどの営業ツールや、店舗やオフィスなどの空間、挨拶や接客・SNSなど、消費者・顧客とのコミュニケーション、広告宣伝やキャンペーン、また製品・サービスを購入して使用するまでなども含みます。そして、これらを一貫して設計していきます。
「ブランド要素」と「ブランド体験」は、消費者・顧客に対し記憶となって働きかける作用があります。これらをここでは「刺激」と呼び、すべてを設計する一連の行為を「刺激の設計」と呼びます。
〈刺激を設計する上で大切な3つのこと〉
消費者・顧客の心の中に意図した通りの心の反応を起こすために「ブランド要素」と「ブランド体験」(=刺激)は一貫してコントロールすることが大切です。
ポイントは、以下の3つです。
◎ 一貫性:
すべてのブランド要素とブランド体験が、ブランド・アイデンティティの元に「一貫して」設計されていなければなりません。また、時間や季節、キャンペーンや地域ごとによって一貫性が崩れることがあってはなりません。いかなるときも一貫していることが大切です。
◎ 意図的:
ブランド要素とブランド体験の中に偶然の要素が入ったり、思いつきで刺激を変更するようなことがあってはなりません。すべての刺激は、ブランド・マネージャーが「意図的」にコントロールできる必要があります。
◎ 継続性:
「ブランドは築城10年、落城1日」という言葉があるように、継続的に、時間をかけて構築するものです。消費者・顧客の心の中に特定の「反応」が生まれるまでには時間がかかるため、継続することを前提として「刺激」を設計しましょう。
③ブランド・イメージ(心象)
企業や団体が消費者・顧客に特定の「刺激」を与えると、消費者・顧客の心の中に「反応」が生まれます。
「刺激」を与え続けることにより、その「反応」が積み重なり、消費者・顧客の心の中に特定の「ブランド・イメージ(心象)」が醸成されます。
ブランド・イメージは、消費者・顧客がブランドに対して「こう思うよ」という判断であり、企業や団体が発信し続けてきた「刺激」に対する評価でもあります。
つまり、ブランド・イメージは、消費者・顧客が一方的に、また自主的に作り上げるものではなく、企業とのコミュニケーションの中で醸成されるものなのです。
④ブランディング
企業や団体が製品・サービスによって提案したいブランド独自の価値「ブランド・アイデンティティ」と、消費者・顧客が心の中に抱く心象「ブランド・イメージ」を近づけ一致させる活動が「ブランディング(Branding)」です。
英語の表記を見るとわかりやすいのですが、「Brand-ing」は「ブランド(Brand)」の現在進行形です。「ブランドであり続ける(ing)」ための継続的な行為を、ブランディングと呼びます。
企業や団体におけるブランド・マネージャーの責務は、企業と消費者・顧客のコミュニケーションである「ブランディング 」に関わる全体像をとらえ、「ブランド要素」「ブランド体験」を設計し、正しく運用管理することです。
「ブランド・マネージャー資格試験公式テキスト」一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会著/中央経済社より転載。
ブランドデザイン研究所 / BRAND DESIGN Labs
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